ケーススタディ

IncrediBuild for Playstation 3 - SEGA 龍が如く4 伝説を継ぐもの 開発チーム

概要

株式会社セガでは広い範囲にわたってコンテンツを開発・発信しています。現在までの膨大なコンテンツ開発を支えてきたのは技術に対するセンシティビティの高さであり、数々の "史上初" と言われる製品を生み出す基盤となっています。 2010年3月18日リリースとなった "龍が如く4 伝説を継ぐもの" も日本で高い評価を受けており、本シリーズは海外において"Yakuza"シリーズとして親しまれている株式会社セガの代表作の最新版となります。

この記事ではこの "龍が如く4 伝説を継ぐもの" の開発チームに採用された IncrediBuild がどのように運用され、どんな効果を生んだのかを紹介します。



目次



チャレンジ

株式会社セガは、 PlayStation3、Wii、Xbox360 といった複数のプラットフォームを対象にゲームの開発をしています。

コンソールプラットフォームを対象にしたプロジェクトは通常18か月〜24か月という期間を掛ける規模となり、ソースコードは200万行を超えるものとなります。また、ターゲットコンソール向けのソースコードだけを開発するだけではなく、さまざまなエンジン(例えばゲーム用物理エンジン)やゲームの基本動作も含めて Windows プラットフォーム上で開発・試験を行うモジュールも少なくありません。 特に "龍が如く4 伝説を継ぐもの" ではソースコードも膨大で PlayStation3 コンソール向けの有効コードは250万行を超えるものとなりました。

これはストーリーとともにゲームボリュームも重視したリアリティのある世界の演出を重視した結果となります。

本シリーズの開発では "龍が如く 見参!"*1 の時からビルド時間の長さが課題となり、対応を検討しなければならない重要事項となりました。

*1 発売日: 2008年3月6日 対応機種: PlayStation3



代替案

我々は可能な限りの工夫を行いました。

  1. ソースコードの依存関係を厳密に定義

    コンパイラの動作から検討しソースコード間の依存関係を必要かつ十分な設定にしました。
    一定の効果があるものの技術者個人の努力に依存するものであり、複数の開発者が参加するプロジェクトではルールの徹底も難しいという状況でした。

  2. 開発者PCの再選定

    株式会社セガでは開発環境の整備についても積極的に取り組んでいます。
    専門技術者による開発に使用するマシンの選定、ネットワーク、ストレージの整備は多種多様なデータを扱うゲーム開発では開発効率に大きく影響します。
    開発マシンもビルドの効率を考えて選定した高性能マシンとしました。しかし、CPUのみならず、ハードディスクのアクセス速度やメモリ速度・容量は強化の限界があり、費用対効果として満足出来るものではありませんでした。 PlayStation3 では IncrediBuild 以外に運用可能な分散コンパイルシステムも存在しましたが、その機能は PlayStation3 のみならず多くのプラットフォーム上での開発が必須となる我々の環境を満足させるものではありませんでした。

ソリューション

  IncrediBuild と PlayStation3

我々は様々なツールを検討した中で IncrediBuild を採用しました。導入時点で最も効果が高く、分散処理環境としては間違いなく最高のツールでした。これは今でも最高レベルであると確信しています。
当時より PlayStation3 での開発をターゲットとしていましたが、IncrediBuild では Windows アプリケーションの開発としても大変効果がありました。
導入時、我々はその効果に驚きました。分散処理に参加するマシンを増やす毎に比例するかのように時間が短縮される事を実感しました。

通常このような分散処理のツールはある程度の台数に到達すると効果が表れなくなりますが、IncrediBuild はマシンの増加による効果の向上が実感出来ます。 あわせて、通常、サーバモジュールが優秀だがクライアントが力不足(あるいはその逆)というケースが多いのですが、IncrediBuild はそのバランスが非常に良いツールでした。 サーバモジュール(Coordinator)機能もクライアントモジュール(Agent)機能も非常に高いレベルでバランスが取れていました。ビジュアル的にも判りやすいインタフェースで問題点の解決がスムーズに行えます。

  XGE

Playstation 3 に関しては当初インタフェースが整っていませんでしたが、我々はこれを XGE が持つ機能で Visual Studio と統合しました。 XGE には標準オプションとして選択出来るツールのアドイン(Visual Studio Build Extension)が未対応のターゲットに対して運用出来るようカスタマイズするのに必要なインタフェースを備えていました。 現在、導入は更に簡単だと思います。非常に安定して稼働しており、我々のコンパイル時間の問題は完全に解決しました。
現在はこの XGE の機能を使って様々な処理の効率化も行っています。例えばゲームで使用するデータのコンバートや、シェーダのコンパイルにも使っています。 今後は他の社内ツールでも利用可能な処理に使っていく予定です。


利点

下図は、"龍が如く4 " のビルド時間を計測したものです。


このビルド時間の短縮により得られた利点と利用者の感想を記載します。

得られたメリット

  • 技術者をビルド待ちのストレスから解放することが出来ました
  • 本来時間を使うべきテスト時間を取る事が出来ました
  • プロダクトの目標を達成するには IncrediBuild が不可欠でした
  • 通常24か月を要する大作を12か月で完成させるという目標達成に大いに役立ちました
  • 技術者の無駄な残業が減り、技術者のモチベーションに良い影響を与えました

利用者の感想

  • 非常に費用対効果が高いツールです
  • もはや IncrediBuild なしのビルド作業は考えられません



結論

"龍が如く4 伝説を継ぐもの" ではゲーム性に関わる高い要望と期待を背負ったシリーズ作品の最新作でした。上記のようにこのタイトルの場合通常24か月というスケジュールが組まれる規模です。
我々はこれを12か月で完成させるという事も大きな課題でした。そこには優秀なスタッフや最新の開発機材はもとより、開発効率を高めるあらゆる努力が必要でした。 IncrediBuild はこの開発効率向上という課題に対して物理的な時間の削減だけでなく、多くの付加価値を生んだツールであり今後の開発でも運用し続ける事になります。



株式会社セガについて

株式会社セガは1960年の設立以来、アミューズメントマシンのメーカーとして発展し、1983年以降は家庭用ゲーム機市場へも参入をいたしました。そして常に先進的な製品を提供し続け、市場をリードしてきたセガのコア・コンピタンスは広い範囲に渡ってのコンテンツ開発力であり、数々の"史上初"となる製品を生んだ技術応用力を有し、世界有数のソフト資産を持つゲームメーカーとして世界的な評価をいただいています





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著者について

"龍が如く4 伝説を継ぐもの"*2 開発チーム

*2 発売日: 2010年3月18日 対応機種: PlayStation3 好評発売中
執筆時(2010年3月25日)国内出荷50万本突破。"龍が如く" シリーズ全世界出荷累計も400万本を突破。